息について
時々日記以外にも自分のテクニックについてまとめる記事を書きたいと思います。
その第一弾となる記事ですが、それにしては壮大なテーマを選んでしまったかもしれません。しかし、最も大事なことだと思うので最初に書いておきます。
師匠のY先生もよくおっしゃいますが、声楽とは”息の芸術”です。
これは理解して初めてわかるという類の話なので、字面だけ読んで理解することは不可能です。不可能は承知の上で書きますが、歌っているときに「声を出す」という感覚は私の中にはありません。私の意識としては、「どういうルートで楽器に息を吹き込むか」ということを「観察」しています。自分の中にある意識は少なくて、どこか離れたところから自分の状態を俯瞰しているような感覚です。・・・伝わるかなぁ。伝わらないよなぁ。
例えば強烈なffを歌いに行く・・・のではなく、楽器に吹き込まれた息が響きに変化したのを確認して、それを増幅させるような歌い方。ffを歌っているんだけれども、むしろ静かに、冷静に、すっきりした頭で楽器を眺めている、そんな歌い方。
私が師匠から受け継ぎ、生徒に伝えている息の技術は、そのような歌い方を可能とするものです。
じゃあ具体的にどうするのか、ということはとてもじゃないですが1つの記事では書き切れないことです。ですが、要点は次の2つです。
①息は、直線的に、まっすぐ吐かれる。
②最低音から最高音まで息のルートは全く同じ。
ここで、「いや、息は背中から回してジラーレさせなきゃいけないんじゃないのか?」という疑問が浮かぶ人がたくさんいらっしゃると思います。
私もそのように書かれた書籍を何冊も読んだことがありますが、私の中にそのような感覚はありません。感覚が無いので、生徒にも教えていません(教えられません)。
これはレッスンで見本を示せば誤解が無いことですが、この記事だけを読んで歌い始めたら、必ずアペルトになると思います。
でも、まずはそれでいいと思います。なぜならば、息は常にアペルトだから(こういう表現の是非は置いておいて)。息はアペルトでいいんですが、声はアペルトではダメです。
では、どうすればアペルトな息で、アペルトでない声が出るのか。
そこに行き当たったときに初めて、響き(マスケラ)のことを考える必要が出てきます。
でも、まずは息は直線的に吐くだけということを理解することが必要です。
私がレッスンする際は、まず「発声とはこうあるべき」という先入観があれば、それを取るところから始めます。
・高音は頑張るもの
・パッサージョではコペルトする などなど。
色々なものを削ぎ落としていくと、発声の理論は非常にシンプルに整理されます。
また、色々書いていきたいと思っています。